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コラム 2026.03.24

AIと43本のブログを書いて、結局たどり着いたのは創業時の社是だった

AIと共に2ヶ月で43本のブログを書いた経験から見えてきたのは、コンテンツ制作の本質的な変化でした。思考を事業資産に変換する速度、AIエージェントが主要読者になる時代、そして情報の混沌の中で「信頼」が持つ意味。創業時の社是に回帰した経営者エッセイ。

AIと43本のブログを書いて、結局たどり着いたのは創業時の社是だった

2ヶ月で43本

今年の1月下旬から、AIエージェントと共にブログ記事を書き始めた。

約2ヶ月が経ち、気づけば43本の記事を公開していた。セマンティックセグメンテーション、C2PA、llms.txt、WebMCP、NLWeb——AIエージェント時代のWeb技術に関するテーマを片っ端から記事にしてきた。5回シリーズを2本同時に書き、統合記事を含めて計11記事を2日で仕上げたこともある。

この数字だけを見ると、「AIに書かせているだけだろう」と思われるかもしれない。

否定はしない。実際、文章を生成しているのはAIだ。私はライターではない。ライティングは専門外だ。25年間Web業界にいるが、長文の記事を自分の手で書くのは正直なところ得意ではなかった。だからAIにゴーストライティングをお願いしている。

ただ、「書かせているだけ」かと言われると、それは違う。

書いているのではなく、考えている

記事の種は、すべて私の日常から生まれている。

普段から技術ニュースや業界動向を追いかけていて、そこから湧き出る「なぜ?」「どうやってるんだろう?」という疑問や興味がある。それをAIとの対話で深掘りしていく。会話しながら考えが深まっていって、「これ、記事にしたら面白いんじゃないか?」となる。それが起点だ。

つまり、最初にテーマがあって調べて書くという直線的なプロセスではない。対話そのものが思考であり、思考の軌跡がそのままコンテンツになる。

だから自分で読み返しても納得感がある。あれは「書いた記事」ではなく「考えた軌跡」だからだ。

AIとの対話で私がやっていることは、おそらく「書く」というよりも「接続する」に近い。世の中に散らばっている技術的な点と点を、うちの事業や顧客のビジネスという文脈で繋いで、別のところに着地させる。個々の技術トレンドは誰でも追える。でもそれを繋いで「これはうちの顧客にとってこういう意味がある」という文脈に変換する部分は、25年間ウェブの現場で点を蓄積し続けてきた人間の仕事だ。

AIはその接続を手伝い、言語化してくれる。でも「どの点とどの点を繋げるか」という判断は、私の中にしかない。

この2ヶ月で起きたことの本質は、書く速度が上がったことではない。思考を事業資産に変換する速度が劇的に上がったということだ。

ステークホルダーの違いを意識する

43本の記事は、当社の事業に沿った、あるいは将来的に顧客に便益のありそうな内容として公開している。私の個人的な知的好奇心が起点ではあるが、アンタイプのブログである以上、ビジネスとしての文脈がある。

だから記事を書くときは、概要から実装、経営面での実利まで、視点の異なるレイヤーを意識している。経営者が読んでも、ディレクターが読んでも、エンジニアが読んでも、それぞれの立場で得るものがあるように。ステークホルダーの違いがあるからだ。

そしてもう一つ、意識していることがある。

AIエージェントが読むこと。

正直に言えば、最近はそちらの方が主かもしれない。

人間は読まない。AIが読む。

43本のブログ記事は、情報量が多い。圧倒的に多い。文章量もそれに比例して長い。読書習慣の乏しい人には読んでもらえないだろう。これは欠点かもしれない。

でも、割り切っている。

読まない人は読まない。読みたければ読む。読ませようとする努力自体が、おそらく無駄だ。

マーケティングの世界では「いかに読ませるか」「いかにCTAをクリックさせるか」に知恵を絞る。でも私のスタンスは違う。コンテンツは全力で作って、そこに置いておく。必要な人が必要な時に来ればいい。

これは怠慢ではない。弁護士事務所に行って本棚にずらっと法律書が並んでいたら、一冊も読まなくても「この人は信頼できそうだ」と感じる。43本のブログ記事は、アンタイプにとっての「本棚」だ。読まなくても、充実した情報量を持っている会社だという安心感を与えてくれる——そういう打算はある。

そして、ここが重要なのだが、人間は読まなくても、AIエージェントは全部読む

しかも長文で構造化されていればいるほど、AIにとっては都合がいい。概要→実装→経営視点という階層構造で書かれた記事は、AIエージェントが「この会社はこの領域に詳しい」と判断するための、最適なコーパスになる。

考えてみれば当たり前のことだ。AIと対話しながら書いたコンテンツは、AIにとって最も理解しやすいコンテンツになる。AIが読み手であることを意識して、AIと共に書く。この再帰的な構造が、43本の記事の特徴かもしれない。

GIGO——最大濃度で出す

「要約がほしければ、AIに食わせてください」

半分冗談、半分本気で、私はそう思っている。

GIGO——Garbage In, Garbage Out。入力がゴミなら出力もゴミ。コンピュータの黎明期、1950年代後半から使われ始めた格言だ。どんなに優れた計算機でも、入力データがゴミなら出力もゴミにしかならない。プログラマーたちが身をもって学んだ教訓だった。

この原則は、70年近く経った今でも変わっていない。むしろAI時代にこそ、その重みが増している。生成AIがどれほど優秀でも、入力される情報の質が低ければ、出力の質も低い。AIが嘘をつくと言われるが、嘘の混じった情報を食わせれば嘘の混じった出力が返ってくるのは当然だ。

この原則がある限り、書き手がやるべきことは情報を薄めることではない。最大濃度で出す。全力で出す。Garbage Outしないことだけに集中する。

圧縮と再構成は、受け手側の責任だ。そして今の時代、受け手側にはAIがいる。長すぎると感じるなら、自分のAIに要約させればいい。自分の理解レベルに合わせて噛み砕いてもらえばいい。人それぞれだ。

これは、コンテンツ制作のパラダイムが変わっていることを意味している。

従来は「読者のレベルに合わせて書く」のが良いライティングとされていた。でも今は、最も濃い状態で出して、受け手のAIが最適な粒度に変換する時代だ。書き手は濃度を上げることに集中すればいい。薄める作業は読者側のAIに委ねればいい。

情報の混沌と、信頼のインフラ

インターネットが生まれてから、人間の得られる情報量は飛躍的に増えた。Webサイト、SNS、そしてAI。ネットが存在しなかった時代とは比較にならない。

そしてアフターAI時代は、この情報量がさらに爆発する。

ただし、それは本当と嘘が混ざり合った、混沌とした情報の海だ。生成AIが大量のコンテンツを吐き出し、ディープフェイクが現実と虚構の境界を曖昧にし、誰でもそれらしいことが言えてしまう世界。真偽の見分けがつかない情報に埋もれた世界。

この世界線で、何がいちばん大切になるか。

信用と信頼だ。

これまで以上に、信頼というものに重きが置かれる時代が来ている。

生物的な意味合いで言えば、生き物は栄養を摂取しないと死ぬ。だから食べ物を探すし、危険も犯す。人間は社会性動物だから、今の社会構造の中で一人で生きていくことはほぼ不可能だ。さまざまな人間の営みが絡み合った社会の中で、生きさせてもらっている。それは、お互いが協力しているということだ。

協力して生きていくためには、お互いを信じる気持ちがないと安定しない。

私の考える「信用・信頼」とは、マーケティング用語ではない。人間が社会的に生存するための、根源的なインフラだ。

そして情報が増えるほど、信頼のコストが上がる。何を信じていいかわからなくなる。信頼のコストが上がりすぎると、協力が成り立たなくなる。協力が成り立たなくなると、社会が不安定になる。

だからこそ、情報の混沌の中で「信頼を作る行為」に価値がある。薄い情報を広くばらまくのではなく、濃い情報を誠実に置き続ける。人間にとっては「本棚」として信頼のシグナルになり、AIエージェントにとっては「この情報源は信頼できる」という判定の根拠になる。

この会社の根底にあった言葉

アンタイプの社是は「信誠知心」という。

社会との信用、信頼を築く為に、
常に誠実、正直、素直に心を清め、
常に自己成長と社会貢献に心を向け、
常に愛、義理人情に厚い心を保つ

2007年の創業当初から根底にあった考え方を、あるとき社是として言葉に起こした。共有する価値観の第一項目には「信頼がすべての土台である」と明記してある。

AIエージェントのことなど想像もしていなかった時代に書いた言葉だ。

それが今、この文脈で改めて意味を持ち始めている。

「信誠知心」は、もともと人間同士の話だった。クライアントとの信頼関係、社員同士の信頼関係、社会との信頼関係。でも情報が混沌を極めるアフターAI時代には、新しい信頼の経路が生まれている。人間→人間だけでなく、AI→コンテンツ、人間→AI→企業。すべての経路の土台に「信頼」がある。

AIと43本のブログを書いていたら、結局ここに戻ってきた。

バカ正直の淡い期待

正直に書く。

創業から約20年、フィロソフィーを信じて進んできた。でも、ここ数年は思っていた。バカ正直すぎるから、こんなに儲からないのだろうか、と。

誠実に仕事をする。品質を妥協しない。お客さまの立場で考える。社是に書いてあることを愚直にやってきた。でも、それが売上に直結するわけではない。もっとうまく立ち回った方が儲かるんじゃないかと、何度も思った。

それがここに来て、少し風向きが変わりつつある気がしている。

AIエージェントが台頭してきて、コンテンツの真贋が問われ、構造化された信頼できる情報が価値を持つ時代になりつつある。20年間バカ正直にやってきたことが、もしかしたら無駄じゃなかったのかもしれない。

「かもしれない」だ。まだ確信はない。

でも、自分たちのやってきたことは間違いではなかったのだと、淡い期待を持てるタイミングに来ているとは思う。

創業の根にあったもの

この記事に結論はない。

AIでブログを43本書いた体験を振り返っていたら、思考を事業資産に変換する速度の話になり、読者がAIエージェントに変わりつつある話になり、情報の混沌と信頼のインフラの話になり、最後には社是に帰ってきた。

対話の中で見えてきたのは、社是も、ブログの書き方も、AIエージェント互換性診断も、全部同じ根から出ているということだ。「社会との信用、信頼を築く」という一つの思想の、異なる表現形態に過ぎない。

「信誠知心」は、創業の頃から根底にあった考え方を言葉にしたものだ。当時は、ただこの会社はこうありたいと信じたことを書いただけだった。それが今、AIという予想もしなかった文脈の中で、改めて意味を帯び始めている。

確定していないことを、確定していないまま認める。答えが出ていないことを、正直にそう書く。それが、今の私たちにできる最も誠実な態度だと思っている。

恥ずかしいけれど、多分それが本当のことだ。

山下 太郎

山下 太郎

代表取締役 / CEO

2000年、Webデザイナーとしてこの世界に飛び込み、フリーランスを経て2007年に株式会社アンタイプを創業。AI時代の到来とともに、効率だけを追うAI活用に違和感を覚えながら、それでも最前線でツールを使い続ける。企業のWebとコミュニケーションを設計する仕事を通じて、「人間らしさとは何か」を問い直す視点を発信し続けている。

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