自社のサービスを調べている人が、すべてのページを自分で開いて読んでいるとは限らない。AIに候補を探してもらい、条件を比べ、その結果を見て問い合わせ先を選ぶ。そんな使い方を想定すると、企業サイトで気にかけたいことも少し変わってくる。
見やすいページを作ることに加えて、情報が正しく伝わるか、操作を任せてもよい範囲はどこか、その状態を誰が保つか。今回は、企業が判断するうえで押さえておきたい三つのことを考えたい。
Webサイトの使われ方が変わり始めている
AIがページを読んで答えるだけでなく、利用者の代わりにサイトを操作する。そのための仕組みづくりが進んでいる。
Googleは2026年6月、サイトがAIエージェントにとって使いやすいかを確認する、Lighthouseの「Agentic browsing」監査を紹介した。ボタンの役割が機械にも分かるか、操作の途中で画面が動かないか、といった点を確かめるものだ。
同じ発表では、サイトの機能をAIが呼び出せる形で示す「WebMCP」も紹介されている。ただし、これらは完成した共通仕様として広く定着したものではない。公式資料では実験段階とされ、監査にはChrome 150以降、WebMCP関連の監査には試験への登録が必要だ。
こうした動きは、ECの現場でも具体化している。Shopifyは2026年8月にWebMCPへの対応を発表し、利用者が見ているブラウザ上で、AIが商品を検索したりカートを操作したりできるようにした。9月には注文手続きへの対応も広げ、購入者の確認を経て注文を確定するところまで支援している。本人認証が必要な場面では、利用者自身に操作を戻す。利用には対応するChromium系ブラウザとAIエージェントが必要で、ストアの構成やバージョンにも条件がある。
すべてのサイトで、AIが予約や購入を確実に代行できるようになったわけではない。それでも、「人が見て使う」ことに加えて「AIが読み、操作を手伝う」ことを、サイト設計の検討に入れる時期には来ていると私は考えている。
この変化は、自社にどう関係するか
例えば、法人向けのサービスを探す人が、AIに「この条件に合う会社を三社比べて」と頼む場面を考えてみる。
自社の紹介ページには新しい料金、古いPDFには以前の料金が残っている。対応地域や契約条件も、ページによって少しずつ違う。人なら問い合わせて確かめるところを、AIが古い資料を基に整理すると、意図した条件で比較されない可能性がある。これは想定例だが、情報の食い違いをなくすことは、人が読む場合にも役立つ。
さらに、問い合わせや予約の入力をAIが手伝う場面では、正しく読めることだけでは足りない。誰の申し込みなのか、何を確認してから送信するのか、重複した予約をどう扱うのか。操作の先には、顧客への対応や社内の仕事がつながっている。
以前、企業サイトが何を預かっているかを把握する大切さを書いた。顧客との接点を増やすなら、そこで受け取る情報や引き受ける処理も一緒に見直したい。AIへの対応も、この日々の管理の延長にある。
整えたいのは、情報・安全・運用の三つ
情報:何が正しいかを、社内でもサイトでも揃える
料金、対応範囲、申し込み条件など、顧客の判断に関わる情報から確認する。紹介ページ、FAQ、PDFで説明が違っていれば、どれを最新にするかを決める。
そのうえで、変更があったときに誰が更新するかまで決めておきたい。読み手がAIになっても、元の情報を正しく保つ仕事は企業に残る。新しい技術を導入する前に、サービス担当者とWeb担当者が同じ内容を確認できる状態を作ることには意味がある。
安全:どこまで任せ、どこで本人に確かめるかを決める
情報を探すことと、予約を確定することでは、必要な確認が違う。契約、支払い、個人情報の送信など、結果の重い操作は、実行前に内容を示し、本人が確認できるようにする。その区切りを設計上の条件にしたい。
例えば予約なら、日時、内容、金額、キャンセル条件を確定前に確認できるか。誤りがあった場合に訂正や取り消しができるか。こうした点を、利用者と運営側の両方から確かめる。確認画面を一つ足せば安全が保証されるわけではないが、何を確認してもらうかを曖昧にしないことは出発点になる。
運用:確認する人と、困ったときの連絡先を決める
情報を直す人、機能を保守する人、顧客からの連絡を受ける人は、同じとは限らない。社内と制作会社、外部サービスの間で、誰が何を受け持つのかを整理しておく。
Web担当者がすべての技術を学び、毎回一人で調査する必要はない。技術面の点検は誰に頼めるか、事業上の判断は誰が行うか、不具合があれば誰に連絡するか。役割が明確なら、担当者は状況を把握しながら、商品やサービスをどう伝えるかという本来の仕事に時間を使いやすくなる。
全面改修より、重要な導線を一つ見直す
最初からサイト全体を作り替える必要はない。まずは、事業上の重要性が高い導線を一つ選ぶ。例えば「サービスを比較し、条件を確認して、問い合わせる」までだ。
その流れに沿って、料金や条件が揃っているか、フォームの項目が分かりやすいか、送信前に内容を確認できるか、受け取った情報を誰が扱うかを見ていく。現在のサイトでも直せることと、新しい仕組みを試すことを分ければ、着手する範囲が見えやすくなる。
費用を考えるときも、初期の改修費だけで比較しない。更新や点検にかかる継続費用、社内で確認・調整する時間、問い合わせ対応の手間まで含めて考えたい。例えば、料金の食い違いが原因で説明し直す仕事があるなら、その内容と頻度を記録する。改善後に同じ負担がどう変わったかを確かめれば、次の投資を判断する材料になる。
一方、利用がまだ見込めない機能まで、先回りしてすべて実装する必要はない。今ある困りごとを減らす改修と、AIを使った操作の小さな検証を分け、何が分かったら次へ進むかを決めておく。対応範囲を広げるほど、保守や確認の仕事も増える。その負担を引き受けられるかも、費用対効果の一部だ。
AIが使うWebサイトへの準備は、顧客が迷わず判断でき、必要な手続きを進められる状態を、企業が保ち続ける仕事でもある。unTypeも、情報の伝え方と安全な操作、その後の運用を一緒に考えるパートナーでありたい。まずは自社にとって大切な導線を一つ選び、情報・安全・運用のどこに手を入れると役立つかを整理するところから始めたい。
参照情報
- A developer toolkit to make your website agent-ready(Chrome for Developers、2026年6月22日)Agentic browsing監査とWebMCPの紹介。
- Lighthouse agentic browsing scoring(Chrome for Developers)実験段階であること、検証条件、監査の評価方法。2026年10月30日確認。
- WebMCP support for Liquid and Hydrogen storefronts(Shopify、2026年8月5日)商品検索・カート操作とチェックアウト画面への遷移の対応発表。
- WebMCP support for checkout(Shopify、2026年9月28日)購入者確認後の注文確定への拡張と、本人認証時の利用者への引き継ぎ。
- WebMCP tools(Shopify)対応環境・ストア構成やバージョンの条件。2026年10月30日確認。
関連記事
この記事をシェアする